2020年3、4月、日銀の新型コロナ対策

日銀

新型コロナ対応:2020年3、4月

新型コロナの感染拡大を受けて日銀は2020年3月16日、「新型感染症拡大の影響を踏まえた金融緩和の強化」を決定。

具体的には、(1)国債買入れやドルオペを含む一層潤沢な資金供給の実施、(2)新たなオペレーションの導入を含めた企業金融支援のための措置、(3)ETF・J-REITの積極的な買入れ、を決定しました。

また2020年4月27日にも追加の対応策を決定し、新型コロナ対策として日銀は以下のような仕組みを提供することにしました。

 

出所 日銀

(1)一層潤沢な資金供給の実施

日銀は以下の通り、日本円と米ドルを供給することにしました。

  • 積極的な国債買入れなどのほか、(2)、(3)の手段も活用しつつ、当面、円資金の一層潤沢な供給に努める。
  • 米ドル資金については、本日、日本銀行は、カナダ銀行、イングランド銀行、欧州中央銀行、米国連邦準備制度およびスイス国民銀行と協調して、資金供給オペについて、貸付金利を0.25%引き下げるとともに、これまでの1週間物に加え、3か月物を週次で実施することを公表した。これにより、米ドル資金の流動性供給にも万全を期す方針である。

日本円の供給

日本円の供給は、国債買入、ETF・REIT買入、新型コロナオペにより行われます。

このうち、国債買入、ETF・REIT買入は日銀がこれらの資産を買い取り、その代金、すなわち日本円を(日銀にこれらの資産を売ってくれた銀行などに)支払うことで、日本円の供給を行います。

また新型コロナオペは、銀行が、「新型コロナ関連の貸出を行うので、その元手を貸してほしい」(注)と日銀に頼むものです。

貸出などを通じて日本円の量が増えれば、お金が足りずに倒産する企業も減るでしょうから、日本経済の支えになると日銀は考えたわけです。

(注)実際は、銀行が新型コロナ関連の貸出を行った後に、日銀に対して、「これだけ新型コロナ関連の貸出を行って、お金が減ったので、サポートしてほしい」と日銀に頼み、日銀がその銀行に、お金を貸すことです。

米ドルの供給

米ドルは国際的な決済通貨です。例えば日本企業と海外企業が取引を行う際、米ドル建てで代金の受払を行うことがスタンダードとなっています。

日本企業がいくら日本円を持っていても、米ドルを持っていなければ、海外企業との取引でお金を払うことが出来ません。

例えば日本企業が、(1)海外企業からモノを輸入したのに、お金(米ドル)を払うことが出来ず、倒産してしまったり、(2)海外企業からモノを輸入したいのに、お金(米ドル)がないので、輸入できず、ビジネスが止まってしまったり、という支障が生じます。

日本企業が国内銀行から米ドルを借りることが出来れば、日本企業のドル不足も解消します。しかし国内銀行も海外との取引で米ドルを使うので、国内銀行も米ドル不足となり、企業に米ドルを貸す余裕がない、というのがコロナ直後の状況でした。

このようなドル不足を解消するために、国内銀行が米ドルを欲しい場合、日銀にお願いすれば、日銀が米国の中央銀行であるFRBから米ドルを借りてくれて、それを国内銀行に貸す、という仕組みがあります。

コロナ対策としては、この仕組みで国内銀行が日銀からドルを借りる際、その金利を下げることで、国内銀行がドルを借りやすくしたのです。その結果、国内企業も国内銀行からドルを借りやすくなり、ドル不足は軽減しました。

 

(2)企業金融支援のための措置

日銀はコロナにより売り上げが減って、お金がなくなった企業を助けるために、次の2つの策を導入しました。

  1. 新型コロナウイルス感染症にかかる企業金融支援特別オペの導入
    いわゆる、「新型コロナオペ」です。民間企業債務を担保に、最長1年の資金を金利ゼロ%で供給する新たなオペレーション(残高の2倍の金額を「マクロ加算残高」に加算)を導入する。同措置は、2020年9月末まで実施する。
  2. CP・社債等買入れの増額
    CP・社債等の追加買入枠を合計2兆円設け、CP等は約3.2兆円、社債等は約4.2兆円の残高を上限に買入れを実施する。増額買入れは、2020年9月末まで継続する。

1は、民間企業にコロナ関連貸出しを行った銀行に対して日銀は、低金利(ゼロ%)でお金を貸すほか、ボーナス(日銀当座預金で一定金額、マイナス金利が適用されない枠)を付与することを決めました。

その結果、銀行は積極的に、企業に対して新型コロナ関連の貸出を行うようになりました。

2は、日銀がCP(コマーシャル・ペーパー)や社債の買入額を増やす、というものです。

大企業はCP(コマーシャル・ペーパー)や社債を発行し、金融市場からお金を集め、そのお金も使って事業を行っています。CPや社債の買い手は主に、銀行や保険会社、年金や投資信託などの機関投資家です。

日銀がCPや社債の買入額を増やせば、これら機関投資家はCPや社債が発行された際、とりあえず買っておいて、(お金を集めた企業が倒産しそうになるなど)雲行きが怪しくなったら、そのCPや社債を日銀に売る、という選択が行いやすくなります。

その結果、企業がCPや社債を発行しやすくなるので、企業が新型コロナによる売り上げの減少などでお金に困っても、(CPや社債を通じて)お金を集め、倒産の危機を回避できる可能性が高まります。

(3)ETF・J-REITの積極的な買入れ

新型コロナを受けて、日銀はETF(上場投資信託、つまり、株)やJ-REIT(不動産投資信託、つまりビルなどの不動産)の買入額を増やすことを決定しました。

  • ETFおよびJ-REITについて、当面は、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行う。

それは、日銀が株や不動産を買い支えることで、株価や不動産価格の急落を防ぐことを主な目的としています。

まとめ

日銀は新型コロナを受けて、

  1. 国債買入れやドルオペを含む一層潤沢な資金供給の実施
  2. 新たなオペレーションの導入を含めた企業金融支援のための措置
  3. ETF・J-REITの積極的な買入れ

を決定しました。

1のうち国債買入や2は、企業が資金不足により倒産することを回避するための策です。

1のうちドルオペは、国内銀行や企業のドル不足を解消し、海外銀行、海外企業との取引に支障が出ないようにするためのものです。

3は株や不動産を(投資信託経由で)日銀が買い支えることで、株価や不動産価格の下落を和らげるものです。

 

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