2023年1月、日銀は共通担保オペでYCCを強化

日銀

日銀は23年1月、政策の大枠を据え置き

2023年1月18日、日銀は政策の大枠を据え置きました。

前月である2022年12月20日に日銀は金融緩和の副作用対策として、10年金利のレンジを拡大することを決定しました。

その後、イールドカーブの歪みといった金融緩和の副作用が一段と強まったとの批判はありましたが、日銀は2022年12月における政策修正の効果を見極める段階、として、さらなる政策変更は見送りました。

2023年1月時点のコアインフレ率は4%台まで上昇していますが、同日公表された展望レポートでは、コアインフレ率が22年度2.1%、23年度1.8%、24年度1.6%と低下していくとの見通しが示されています。つまり2%物価目標の達成は想定されていません

また後述の通り、共通担保オペでYCCの持続可能性を強化しました。これは金利上昇を抑えるものであり、緩和的な決定といえます。

〇2023年1月における日銀の見解

出所 日銀

一段と強まる、政策修正期待

日銀はこれまで、国債買入(輪番、指値オペ)でイールドカーブの調整(イールドカーブ・コントロール、YCC)を行ってきました。

2022年12月20日に10年金利の上限がこれまでの0.25%から0.50%に変更されて以降は、10年金利が0.50%以下となるように、国債買入を行ってきたのです。

しかし黒田総裁が2023年4月で任期満了となることもあり、「日銀が大規模緩和を見直すのでは」との見方が強まりました。2022年12月20日に10年金利の上限が引き上げられたことも、「政策見直しの一環か」との見方に拍車を掛けました。

日銀が大規模緩和を変更するならば、国債の買入額は減らされるかもしれませんし、「10年金利を0.50%以下に抑える」という現在の約束も変更されるかもしれません。

そこでヘッジファンドといった投機筋は、日銀が「10年金利を0.50%以下に抑える」ことをやめるだろう、との見立てから、10年金利の上昇を想定し、10年国債を空売りすることにしたのです。

共通担保オペでYCCを強化

日銀が将来、「10年金利を0.50%以下に抑えることをやめる」としても、そのような決定がなされるまでは、日銀は10年金利を0.50%以下に抑えなくてはなりません。

そこで日銀は2023年1月18日、国債買入(輪番、指値オペ)に加えて、共通担保オペもイールドカーブの調整(イールドカーブ・コントロール、YCC)に用いることにしたのです。

共通担保オペとは日銀が金融機関にお金を貸すことで、期間は最長で10年です。

例えば10年国債利回りが現在0.5%の中で、日銀が金融機関に期間10年、金利0.40%でお金を貸すことにすれば、金融機関は喜んでお金を借りて、10年国債を買うでしょう。

そうすれば、0.5%-0.4%=0.1%の利ザヤを確保できるからです。

この例ですと、金融機関が日銀からお金を借りて国債を買う結果、10年金利は0.5%から低下することになります。

2023年2月までにおいては、日銀は5年までの共通担保オペを実施しています。5年の共通担保オペは5年国債利回りを押し下げるので、間接的に10年国債利回りも押し下げられます。

今後、必要となれば、日銀は期間10年の共通担保オペを実施することで10年国債利回りを直接押し下げる可能性もあるでしょう。

共通担保ぺの期間、金額、金利

共通担保オペの期間は事前に日銀が決定します(最長10年)。

金額(貸出総額)も日銀が決定し、希望額が貸し出し予定額を上回る場合は、予定額を希望者毎に割り振ることになります。

金利は入札方式で決めるパターンと、日銀が事前に決めるパターンがあります。

金利入札方式だと、借入希望者は希望金利と希望金額を提示し、より高い金利を提示した希望者から順に、日銀から借り入れすることが出来ます。

固定金利方式の場合は、日銀が事前に金利を提示し、希望者がその金利で借りることになります。

共通担保オペの役割

上記の通り共通担保オペは10年金利を0.50%以下に抑えるという、現在の日銀政策をサポートする役割を担うことになりました。

日銀が今後、この目標を変更する可能性は十分にありますが、変更までの期間は共通担保オペが日銀の低金利政策維持のサポートとなるでしょう。

もし日銀が金利目標を変更した場合、国債利回りは大きく上昇することが想定されます。

このような市場の混乱を抑えるために、日銀は国債買入に加えて共通担保オペでも金利の急上昇を抑えることが想定されます。

つまり共通担保オペは、日銀の政策維持のためだけでなく、政策変更後においても、金利上昇を抑制するという効果を持つのです。

まとめ

2023年1月18日、日銀は政策の大枠を据え置くも、共通担保オペでYCCの持続可能性を強化しました。これは金利上昇を抑えるものであり、緩和的な決定といえます。

ただしこれは、日銀が今後も政策を変更しないことを意味するものではありません。

日銀が政策を変更するまでは、共通担保オペの助けも借りることで、現在の低金利政策を維持する、つまり、共通担保オペを「時間稼ぎ」として使うとの見方が優勢となっています。

2023年3月9、10日は黒田総裁にとって最後の決定会合、4月27、28日は植田新総裁にとっての最初の決定会合となります(日銀の決定会合予定)。

市場参加者はいつ、日銀が政策を修正してもおかしくないとの見方を維持しており、日銀決定会合の前後では金融市場が大きく変動する状況が続きそうです。

 

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